17年度処遇改善加算で月額1万2,200円増
厚生労働省は4月4日、社会保障審議会介護給付費分科会(座長=田中滋・埼玉県立大学理事長)を開き、介護職員の給与や処遇改善加算の影響などを調べた「2017年度介護従事者処遇状況等調査」の結果を報告した。昨年4月に実施された臨時の報酬改定により、介護職員処遇改善加算を取得している事業所では、常勤介護職員の平均給与額が前年比で月額1万2,200円、非常勤職員は時給が20円増加。介護職員の処遇改善が着実に進んでいる実態が明らかになった。 人材不足が深刻化している介護業界。その最も大きな理由は、介護人材の賃金が他産業と比較して低い点にある。
こうした状況に対し、厚労省は過去4度にわたり処遇改善策を実施。09年4月の介護報酬改定では3%のプラス改定、さらに09年度の補正予算では1万5,000円相当の処遇改善交付金を創設。その後も、12年度の報酬改定で処遇改善交付金を処遇改善加算に置き換え、15年度に1万2,000円相当の加算の拡充を行ってきた。
これまでの実績として4万3,000円相当の処遇改善効果が出ていると厚労省は説明する。
さらに昨年4月には、異例の期中改定を行い、介護職員処遇改善加算に昇給と結びついたキャリアアップの仕組みを手厚く評価する新加算(Ⅰ)を創設。介護職員の賃金をさらに月額1万円相当引き上げる報酬改定を実施した。
今回、4月4日に開かれた介護給付分科会で、その効果が報告された。国が示した調査結果によると、処遇改善加算の届け出をしている事業所の割合は、全体の91.2%。そのうち加算(Ⅰ)を取得している事業所は64.9%と、全体の3分2近くあることが分かった。
(Ⅰ)以外の加算の取得状況は、加算(Ⅱ)が13.5%、加算(Ⅲ)が10.7%、加算(Ⅳ)が1.1%、加算(Ⅴ)が1.0%となっている。
一方で、加算を取得していない事業所も8.8%存在する。取得しない理由は、「事務作業が煩雑」が51.3%で最も高く、「利用者負担の発生」が39.6%、「対象の制約のため困難」26.8%などとなっている。給与額の変化では、処遇改善加算を取得している事業所だと、常勤介護職員の平均給与額(年収の1カ月分)が29万3,450円となり、前年比で1万2,200円増加していた。非常勤介護職員も平均時給が対前年20円増の1,110円という結果だった。
加算(Ⅰ)を取得している事業所だけに絞って見ると、常勤介護職員の平均給与額は29万7,450円で、前年比で1万3,660円増となっている。
処遇改善加算は、支給対象が介護職員に限定されているが、介護職員の賃金改善に引っ張られる形で介護職員以外の給与額も増加している。
今回の調査結果では、看護職員が36万8,560円(前年比6,930円増)、生活相談員・支援相談員31万8,660円(同9,090円増)、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・機能訓練指導員34万3,760円(同8,950円増)、介護支援専門員34万5,820円(同8,320円増)、事務職員30万2,780円(同6,750円増)、調理員25万3,680円(同3,710円増)、管理栄養士・栄養士30万6,360円(同8,680円増)となり、すべての職種で給与額が増加した(表)。
基本給で見ても、介護職員は18万30円(同3,140円増)、看護職員23万3,710円(同2,070円増)、生活相談員・支援相談員20万7,020円(同2,710円増)、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・機能訓練指導員22万6,760円(同2,710円増)、介護支援専門員21万6,260円(同2,960円増)などの結果となり、いずれの職種の基本給も増額となっている。給付引き上げの実施方法は、「定期昇給」が66.4%と最も高かったが、「給与表を改定して賃金水準を引き上げ(予定)」も22.5%いた。 サービス別にみると、「定期昇給」は特養や老健で8割超が実施。これに対し、訪問介護は53.7%、通所介護が65.1%と、施設サービスと比べると低い結果となった。一方で、「給与表を改定して賃金水準を引き上げ(予定)」では、特養16.2%、老健15.3%に対し、訪問介護27.2%、通所介護24.8%と、昨年4月の臨時の報酬改定によって、特に在宅サービスで給与額の底上げが図られている実態が窺える。
介護職員の処遇改善については、来年10月に予定されている消費税の引き上げに伴い、勤続年数10年以上の介護福祉士に、これまでの実績に上乗せする形で、月額平均8万円相当の処遇改善を行う考えも示されている。
人材確保のネックとなっている待遇問題を脱却できるかどうか、現場の期待感が高まっている。